2010年6月2日水曜日

百日咳は大人の病気になった?


 百日咳は特有のけいれん性の咳嗽発作(痙咳)を特徴とする病気です。

 母親からの経胎盤の移行抗体がほとんどないため乳児早期から罹患します。乳児では生命を脅かすことも稀ではありません。

 私も26、7年前、市中病院に勤務していたとき1ヵ月ぐらいの間隔で生後28日目と30日目の2名の百日咳乳児を診たことがあります。発作のないときは呼吸音も正常ですが、ひとたび発作が起これば幼児の発作のように連続する咳嗽ではなく、咳が出せず詰まって無呼吸となりチアノーゼ出現という状態となります。足の裏をたたくなど皮膚の刺激を与えようやく呼吸が始まります。どちらの時も7日から10日間ほとんど横につききりだったという覚えがあります。

 国立感染症研究所の報告によると20歳以上の成人の百日咳例が年々増加し続け、2000年には成人は2.2%だったのが2009年には40.5%、2010年度は第18週(5月9日)までに56.8%と20歳未満より多くなりました。

 全国約3000ヵ所の小児科定点の報告からの集計なので成人の実数はもっと多い可能性もあります。

 成人の百日咳は典型的な痙咳となることは少なく、かなりの長期間咳嗽が続くのが特徴なので、百日咳の診断がついていない例も多数存在すると思われます。

 成人例がワクチン未接種の乳児への感染の原因となることが考えられ注意が必要です。

 現在は百日咳のワクチンはDPTとしてI期3回追加1回の4回だけでII期のDTワクチンには含まれていません。成人例の増加から見ても早期にII期のワクチンに百日咳を含める必要性があると思います。