2016年5月20日金曜日

ワセリンでアトピー性皮膚炎発病予防の可能性

 2009年加水分解小麦含有の石鹸で小麦アレルギーが発生し、その後小麦製品を食べ呼吸困難に陥る例などがあり大問題になったことをご記憶の方も多いと思います。

 特にそのことをきっかけに食物アレルギー発症が消化管で感作されるより皮膚感作のほうが多いのではないかと考えられるようになりました。消化管は消化液でアレルゲンに成りうる蛋白質などを分解することや、消化管粘膜の表面は粘液で覆われ保護されていることからアレルギー感作が起こりにくいのに対し、皮膚は特に荒れている場合などでは直接に皮膚からアレルゲンが入り込み感作され易くなります。美白のためのレモンやキュウリのパックで、反対に色素沈着が残った例などはよく知られています。食品や天然のものは安全性が高いというように妄信する傾向にあるようですが、かえっていろいろなものを含有する天然ものこそ危険性が大きいのかもしれません。

 以前から皮膚がカサカサする人や、両親にアトピー的な傾向のある人には臀部、頚部、顔など、汚れは洗い流してガーゼ、タオルなどで擦るのではなく指のはらなどでやさしく洗い、一日に何回かワセリンを塗るように指導してきました。このたび動物実験ではありますが裏づけとなるようなデータが発表されました。

 4月25日付けの米科学誌に理化学研究所の吉田尚弘医師らのグループにより、生後8~12週でアトピー性皮膚炎を発症するマウスを用いて、生後4週よりワセリンを塗り続けたところ、保護機能が改善し、炎症を起こす細胞が皮膚に集まるのを防ぎ長期間アトピーの発症しないことが判った発表されました。

 体質が変わるわけではないので完全にアトピー性皮膚炎がなくなるというわけではないでしょうが、少しでも発症を遅くすることが可能となる期待が高まります。