2018年3月28日水曜日

肥満は感染症か




 インドのデュランダー博士が肥満の原因となるウイルス、いわゆる『デブウイルス』を発見したことを、昨年暮に日本のテレビ番組が紹介した。

 食べる量が増えなくても体重が増加するという。

 博士は1988年インドで大量死したニワトリがすべて太っていることを疑問に感じ調査を進め『デブウイルス』と思われるウイルスを発見した。このウイルスを普通のニワトリに与えたところ3週間後には丸々と太った。

 その後アメリカに渡り、ついに『デブウイルス』はアデノウイルス36型と確定したという。このウイルスをヒトに近いサルのマーモセットに投与したところ一定期間後に4倍近くに体重が増加したという。

 人間にウイルスを投与することはできないが、一卵性双生児で一方が肥満、一方が痩せたもので検査したところ太ったものに『デブウイルス』が存在した。その後一般の肥満の人の30%から感染が証明できた。

 以上の報告から、肥満の人の30%がウイルスに感染していたとしても直ちに『デブウイルス』が肥満の原因と言い切ることは困難かもしれないが、ウイルス感染が食欲中枢、満腹中枢を支配する視床下部などへの感染で肥満を引き起こすという仮説は成り立つことかもしれない。フェイクニュースというよりイグノーベル賞候補かもしれない。

2016年5月20日金曜日

ワセリンでアトピー性皮膚炎発病予防の可能性

 2009年加水分解小麦含有の石鹸で小麦アレルギーが発生し、その後小麦製品を食べ呼吸困難に陥る例などがあり大問題になったことをご記憶の方も多いと思います。

 特にそのことをきっかけに食物アレルギー発症が消化管で感作されるより皮膚感作のほうが多いのではないかと考えられるようになりました。消化管は消化液でアレルゲンに成りうる蛋白質などを分解することや、消化管粘膜の表面は粘液で覆われ保護されていることからアレルギー感作が起こりにくいのに対し、皮膚は特に荒れている場合などでは直接に皮膚からアレルゲンが入り込み感作され易くなります。美白のためのレモンやキュウリのパックで、反対に色素沈着が残った例などはよく知られています。食品や天然のものは安全性が高いというように妄信する傾向にあるようですが、かえっていろいろなものを含有する天然ものこそ危険性が大きいのかもしれません。

 以前から皮膚がカサカサする人や、両親にアトピー的な傾向のある人には臀部、頚部、顔など、汚れは洗い流してガーゼ、タオルなどで擦るのではなく指のはらなどでやさしく洗い、一日に何回かワセリンを塗るように指導してきました。このたび動物実験ではありますが裏づけとなるようなデータが発表されました。

 4月25日付けの米科学誌に理化学研究所の吉田尚弘医師らのグループにより、生後8~12週でアトピー性皮膚炎を発症するマウスを用いて、生後4週よりワセリンを塗り続けたところ、保護機能が改善し、炎症を起こす細胞が皮膚に集まるのを防ぎ長期間アトピーの発症しないことが判った発表されました。

 体質が変わるわけではないので完全にアトピー性皮膚炎がなくなるというわけではないでしょうが、少しでも発症を遅くすることが可能となる期待が高まります。

2013年6月19日水曜日

MERSコロナウイルス感染症

 2012年9月に初めて中東サウジアラビアで60歳男性の急性肺炎、腎不全による死亡例が報告され、新型コロナウイルス感染症と確定されました。病原体はMERSコロナウイルス(Middle East respiratory syndrome coronavirus)と名付けられ2003年に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)ウイルスに似た新型コロナウイルスでした。

 世界中で2012年9月以降2013年6月7日までに感染者55人死亡者31人を数えました。感染者は2013年5月以降に37人と急増しています。感染は中東だけに留まらずヨーロッパ人も11人が感染し、中東で感染したヨーロッパ人以外に5人はヨーロッパ内での感染であったと報告されました。これからの感染拡大も懸念されています。

 このウイルスはコウモリ起源とされていますが感染方法などは不明です。ヒトーヒト感染は濃厚接触感染と考えられています。

 世界保健機構(WHO)も大規模感染の恐れについて注意を呼びかけています。


2013年6月5日水曜日

風疹の大流行


 我国での風疹の2013年度第1~20週の発生数は7540件になった。男性5844件(77.5%)女性1896件(22.5%)であった。年齢別では男性は30~39歳が36%で、女性は20~29歳が43%で最多であった。

 都道府県別発生数では1位東京2186件2位大阪1412件3位神奈川981件となっている。ただ16~18週は5週連続で大阪は風疹発生数1位となっている。例年これから先、風疹発生の増加のシーズンに入るため今後の動向に注意が必要である。

 高槻市では条件付ではあるが本年9月30日までの期間、妊娠を予定、希望している19歳以上の女性と現在妊娠している女性の夫に風疹予防接種(風疹ワクチン、MRワクチンのいずれか)の全額助成事業を行っている。


2013年6月4日火曜日

先天性風疹症候群


 風疹に免疫のない妊婦が妊娠20週ごろまでに罹患すると新生児に心臓病、難聴、目の異常が出る先天性風疹症候群(CRS)が発症する危険性がある。2012年10月から2013年4月までの半年間に10人のCRS児が報告された。このCRS児の母親が風疹に感染した2012年前半に比べ、風疹発生数は飛躍的に増加しているので、CRS児がこれから先増加する可能性は否めない。妊娠するまでにきっちり風疹に対する免疫をつけておく必要がある。風疹ワクチンが免疫をつけるための唯一の手段となる。

2013年1月13日日曜日

『アンコール・ワット遺跡~~~初めての海外旅行』


1月3日から6日までの4日間カンボジアのアンコール・ワット、アンコール・トムなどの遺跡めぐりのツアーに出かけました。

 1日目の夕にアンコール遺跡群のあるシェリムアップに着き、ホテルに入った後、夜店ナイトマーケットの1つに出かけました。

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カンボジアの通貨はリエルで1$が4000リエルでした。ただシェリムアップは観光地のためどこでも米ドルが通用しました。米ドルのお釣りはリエルでした。やや戸惑いましたが1000リエルが25円ぐらい、1$が100円ぐらいと考えて換算するとおおむね間違いなかったです。

 物価は全体的に安く食品や絹織物などは日本の価格の半分以下でした。ツアーの女性ガイドにアクセサリー、宝石類も安いですが石はほぼ擬物なので注意が必要と釘を刺されました。

 最初の店でT-シャツに目を留めると「7ドル」もう一枚に目を移すと「7ドル」、そんなものかと店を離れかけると背中に「3ドル」と大声。振り向かず移動。一廻りザット見た後、デイバッグとT-シャツ数点を購入。確かに少し粘ると価格は下がるようでした。

 行きはツゥクツゥクなる馬車の馬の代わりがオートバイの乗り物で移動。おおむね市内は舗装されていますが穴ぼこも多く乗り心地は決して良いとは言い難いですが、初めての経験で新鮮味もあり満足しました。帰りはブラブラ周囲の屋台を横目に見ながらホテルに帰着。シェリムアップは人口90万人の大都会ですが道路の信号は5つだけとのこと。中心部から少し離れた田舎では高床式の建物に住み電気も通っていません。田舎で電気をつけるにはオートバイのバッテリーで発電して明かりを灯すようです。普通は暗くなると眠り、日の出前には起きる生活のようです。

 治安は割合良い感じで、泊まったホテルは観光地シェリムアップで数本の指に入る立派なもので日本人のスタッフ1名、フロントの人間も片言の日本語はしゃべれるようでした。客の40%は日本人と日本人に人気のホテルとのことでガイドブックによると日本人料理人の居る日本食レストランもあるとのことでした。ほかに中国人向き、韓国人向き、欧米人向きのホテルもあるようです。

 以前は観光客は日本人が一番多かったようですが、現在は1位中国人、以下韓国人、ベトナム人、4位に日本人とのことでした。

 2日目は早朝からアンコール・ワットの日の出の見学に出かけました。西側から見ると、6時40分にアンコール・ワットの塔の南側にご来光を目にしました。

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 朝食後アンコール・ワットの中の観光です。

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第一回廊、第二回廊で砂岩に浮き彫られた彫刻を見た後、第三回廊、中央塔にも登りました。石の階段は狭く急で登れないので、その上に手すり付きの木の階段を付けたところを一人ずつゆっくりと上るという有様でした。その上遺跡にかかる重量の制限も有り、当然長蛇の列となりました。欧米系の人も多く英語、フランス語、ドイツ語、??語も聞こえてきます。もちろん大声の中国語も飛び交っています。欧米人は礼儀正しく少し身体が触れるとソーリー。列も行儀よく並んでいました。中国人は1人並んでいるところに何人もが大声で流入。

 夕方はアンコール・ワットからの夕日の観賞でした。日の入り前にポイントに入り待つ事になりました。20分ほど周りをウロウロするとガイドが近くのナツメの実を採り食べさせてくれました。2cmほどの実を恐る恐る囓ると柔らかめのリンゴのようで甘酸っぱく1cmほどの種が入っていました。近くにいた男性ガイドが地面を指差し、来いというので行ってみるとなんと皆が歩いている通路のすぐ傍1mの草の上に真っ黒のサソリがいました。

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じっとしているので生きていないのかと思いまわりの地面を足でポンポン。すばやく90度ほど方向を変えハサミを持ち上げ、おしりの毒針をかかげ威嚇。慌てて後ずさりしました。

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跳びかかる様子はないのでじっくり観察。動物、虫、植物好きの私にとっては今回の旅行の収穫の最上級の1つとなりました。ほかにもアサギマダラや見たことのないきれいな珍しい蝶もあちこちでフワフワ花に戯れているようでした。

 3日目はアンコール・トムや他の遺跡見学です。それぞれに特徴があり丁寧な説明があるのですが、なかなか違いが頭に入らず石の彫刻の迫力、繊細さに加え先人の努力に感心するだけとなってしまいました。壁の四方に2mもの観世音菩薩の顔が彫られたものの林立するところや大きな石の壁に細かいきれいな彫刻の浮き彫りなどあきることのない遺跡見学でしたが、まだ十分に修復されていない石を上り下りしながらの見学でさながら山登り気分でもありました。

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 昼間は30度近くにもなりますが乾季だったこともあり割合さらっとしてすごし易く、汗をかいても軽微でした。

 ツアーの女性ガイドは田舎からシェリムアップに出てきて2年間日本語学校で勉強してガイドの試験を受け、日本の旅行会社の試験を受け合格して仕事ができるとのことでした。母国語のクメール語は英語の文法と同じだが、日本語は文法が異なるのに加え字も4種類あるので難しいとのことでした。4種類?と聞き直すと「ひらがな、かたかな、漢字の訓読み、漢字の音読み」とのことでした。ガイドは一日の仕事の時間が長くハードなので女性のガイドは少なく女性はホテルなどに勤めるものが多いとのことでした。

 カンボジアは珍しくパスポートだけでなくビザも必要な国で、飛行機も直行便はなくベトナムもしくタイなど経由で少し旅行前に手間がかかりますが時差は2時間と身体への負担は少ないものでした。今回は始めての海外旅行で、私の海の外の旅行といえば日本に返還されて2年後の一般人がようやく旅行できるようになった最初の昭和47年4月に行った片道44時間もかかる船旅の小笠原です。小笠原8日間、東京2日間、船4日間の旅で14日間と長旅でしたが東京都小笠原村でそのときはもうすでに外国ではありませんでした。

 1月6日午前6時に関西空港に着き4日間といっても実質2日間の短い旅でした。大満足というほどではなかったですが中程度には楽しめた旅でした。

2012年9月8日土曜日

9月から不活化ポリオワクチンが定期接種に


 8月末で生ポリオワクチンが定期接種から外れ9月から不活化ポリオワクチンが取って代わることになった。生ワクチンでは弱毒されたワクチンが人の身体を通ることで先祖返りしてウイルスの毒性が復活するにより、便からの2次感染でごく稀に手足の麻痺がでることもあり、不活化ポリオワクチンの登場となった。ただ不活化ポリオワクチンにも副作用が全くないわけではなく他のワクチンと同様、接種後に発熱することもあり、稀にけいれんやショック症状の出る可能性も指摘されている。

 これまでの生ワクチンでは2回接種であったのが、不活化ワクチンでは1期3回と約1年後の1期追加の合計4回皮下接種となる。他にもヒブワクチン、肺炎球菌ワクチン、ロタウイルスワクチン、B型肝炎ワクチンなど最近接種することになったワクチンに加え、DPTワクチン、BCGワクチンと、より接種スケジュールが過密になることも問題点の1つとなっている。

 今のところ不活化ポリオワクチンの4回目の1期追加分は、治験がまだ済んでおらず定期接種としては認可されていない。しかしそう遠くない時期には(平成25年1月頃か)定期接種に組み入れられる予定となっている。
11月以降DPT3種混合ワクチンに不活化ポリオが加わった4種混合が始まるが、接種年齢の人は先延ばしすることなく、出来るものから接種計画を立て速やかに接種することが大切となる。

2012年5月21日月曜日

金環日食


 5月21日朝少しだけ早起きして6時半ごろよりたぶん大阪では私の目の黒いうちには訪れない金環日食を観測しました。

 日食グラスは2週間ほど前に本屋に出かけ入手しました。少し前は種類も多かったようですが3種類だけになっていました。中では一番廉い950円のものを買いました。あとは天気の良いことを願い万全の準備としました。1週間前の天気予報では曇りで、なかなか晴れの予報を出してくれないので心配だったのですが、結局は100%の快晴ではなかったですが、雲は少しで80%ぐらいは晴れでした。何とか納得のできる観測となりました。

 カメラの前に日食グラスをかざして最大限望遠にして撮影した写真をアップします。手持ちなので手ぶれして満足とはいえませんが〈自己満足のみ〉見て下さい。

IMG_0750.JPG IMG_0753.JPG

 突然ですがクイズです。日食では三日月状の太陽も見られましたが、月は次のどの状態でしょうか。
①満月
②上弦の月
③新月
ヒントとしては太陽と地球に対する月の位置関係。


2012年2月23日木曜日

インフルエンザが大流行


 今冬のインフルエンザは一昨年の新型インフルエンザで大騒ぎをしたときの罹患人数を上回る大流行となっているようです。

 ここ高槻の日吉台あたりでは1月中旬よりインフルエンザが流行し始めました。

 今冬の流行の特徴は例年ではA型の流行がほぼ終息した2月末からB型流行が2週間ほど見られインフルエンザ流行が終了というパターンでしたが、今シーズンは最初からB型の流行が認められ、あまの小児科では4割ぐらいを占めています。

 A型、B型が流行しているので、A型とB型同時罹患の人が多いのも今までに経験のない特筆すべきことでした。6年程前にインフルエンザ迅速検査でA、Bとも陽性の小児がいました。少し半信半疑の気持がしたのを覚えています。本年はなんと2月3日に1名、2月18日に2名、2月20日に3名と合計6名の同時罹患の4歳から9歳の小児がいました。親御さんはA、B同時罹患で重症化するのではと心配されましたが、特別に重症になる事はないし、治療も変わりはなくノイラミニダーゼ阻害剤(タミフル、リレンザなど)5日間の使用でよいと説明しました。結局症状の推移は単独のものと同じでした。同時に罹れば1回で済み、よかったという考え方もあるかもしれません。

 2月以降B型陽性の人が7割ぐらいになっているので、さすがにぼちぼち終息に向っていると思います。しかしまだ気を弛めることなく、手洗いマスクに加え十分な栄養と運動で体力保持に勉めインフルエンザをはね返す必要な期間がまだ少し続くものと思われます。


2011年9月13日火曜日

例年と異なる症状の手足口病


 手足口病は代表的な夏カゼ症候群の疾患です。例年ほとんどがコクサッキーA群16型とエンテロウイルス71型が原因ウイルスとなっています。

 本年の手足口病は小児科経験40年になる私も今まで経験のないもので、これまでのものはあまり発熱は認めなかったが、2日間ぐらい高熱が出た後に手掌、足蹠だけでなくほぼ全身に大きな発疹が出ます。顔面に出現することは少なかったですが、1歳児で0.5㎝程度の大きな発疹が20個も出た人もいました。発疹後1ヵ月も過ぎてから爪が剥がれる人もいました。

 これまでヘルパンギーナの原因ウイルスといわれていたコクサッキーA群6型(CA6)が大部分を占めています。CA6の少し変異したウイルスだったのか子供だけでなく大人の人の感染例が多かったのも特徴の一つです。本院では幸いにも職員の感染例はなかったのですが、医療機関で医療従事者の感染が多かったとの報告があります。

 手足口病など夏カゼ症候群ではウイルス性髄膜炎の合併が約1%といわれていますが、新型の手足口病といっても特に髄膜炎が多かったという報告はなかったようです。

 例年は8月に入れば急速に終息してしまうのですが8月も少人数の発症を認め9月にもまたすこし増加しかけているのではないかという気までします。最近は例年10月末から11月初旬にかけてエンテロウイルス71型による手足口病が流行りますが、それとのオーバーラップで判り難くなるのではないかという懸念まで頭をよぎります。